AIが描いた贋作絵画の意味とは?レンブラントの新作をめぐって

AIに創造的な活動ができるか?というんで、レンブラントの画風を学ばせて、新作を描かせたっていう話があります。また、ややこしいことをしたものだな。でも面白いのでちょっといじってみましょうか。

AIに芸術作品をつくらせる

芸術作品をつくる、といえば、最も人間らしい高尚な活動と言っていいでしょうかね?

まあ、いろいろご意見の異なる向きもあるとは思いますが、一応、ここでは世間一般の平均的な考え方ということで。

なので、AI、つまり「人工」知能がやることとは、対極にあるような活動なわけです。

それをAIにやらせて、世の注目を浴びようという魂胆なんでしょう。ほら、AIが芸術をつくったぞ!どうする、どうする?ってね。

「The Next Rembrandt」というオランダのプロジェクトのお話です。

ディープラーニングでレンブラントになりきるAI

レンブラントというのは多作な画家らしいですね。346作が知られているらしい。

AIにディープラーニングで学習させるためには、何せ、たくさんのデータを入れる必要があるので、この、「多作」ってところが非常に大事なわけです。

AIにレンブラントの画風を徹底的に学ばせてどうするか?

もしレンブラントが347作目を描いたとしたら、どんな絵を描くか?それを実際に描かせてみよう、ちゅうわけですよ。

筆が持てないロボットアーム

最初はロボットアームに筆を持たせて描かそうという考えだったようですが、どうも、ロボットアームの技術てやつが、人間の指を再現するほどまでには発達していないようです。

言ってみれば、いくら技術のある画家でも、怪我でもして手が硬直してしまったとしたら、満足な絵が描けない、というのと同じなわけです。

AIのディープラーニング技術は、最近はすごいところまで達しているのは、アルファ碁なんかで示されている通りなわけです。しかし、学ばせた結果をアウトプットする手段が問題だってことです。

AIは3Dプリンタで絵を描くのだ

そこで、出力に3Dプリンターを使っちゃった。

あれ?絵って平面、つまり2次元だよね?って思ったら、そうじゃないんですってね。

油絵って、何重にも絵具を塗り重ねて、盛り上がっているじゃないですか。つまり、油絵って、よ~く見ると3次元なんですね。

その3次元性が重要らしいのです。だから3Dプリンターで描かせようというわけです。

最近の3Dプリンタの技術の発達はすさまじいですよね。もう、どんな形のモノでも作っちゃうじゃないですか。

だから、3次元といっても、2次元に毛が生えたくらいの盛り上がりの油絵なんかは、問題なく作れちゃうようです。

かくしてAIは凄腕の贋作作家になった

そして、ついに絵ができてしまった。

まさに、どこから見ても、レンブラントが描いたかのような作品です。

ほら!芸術作品を機械であるAIがつくってしまったぞ!どうする!?ってわけなんですが、こっれて、AIがすごい能力の贋作作家になったってことじゃないですか?

絵画の価値って、物理的な価値だけじゃないですよね。いくら本物そっくりに似せて作っても、本物じゃなければ価値が低い。

要するに、誰が描いたか、というところが問題になる、特殊な分野です。

AIでつくる時点で価値がない世界

これが、例えば、車なら、形も機能も何もかもそっくり同じに作ったとしたら、同じ価値をもつはずですよね。

つくった人や過程はともかく、最終的にできたもの自体で価値が決まる。工業製品はほとんどそうですね。

ところが、絵画などの美術品の価値って異質じゃないですか。

下手くそでもなんでも、誰が描いたか、誰が作ったか、で価値が生まれる。

だから、極論すると、「AIが人間の真似をしてつくる」という時点で、もう価値がないのです。そういう世界なんですよ。いくらそっくりにつくってもだめ。

と、私は思うんですが、こんなことも思っちゃいました。

芸術性より話題性でうけるかも

もし、今回、The Next Rembrandtのプロジェクトでつくった絵画が、世の中にひとつだけだとか、話題になったからとかで、欲しいと思うひとがたくさん出てくるかもしれないですね。

つまり、芸術性を評価するというより、話題性を評価するというんですかね。

いや、ここまで有名になったら、そういう意味で価値が出てますね。いや、皮肉なものだね。

まとめ

AIにディープラーニングで、レンブラントの画風を学習させた。それによって、AIはレンブラントと同じ画風の絵をアウトプットできるようになりました。

実際のアウトプットには、人工の指というのはまだまだなので、3Dプリンターを用いて油絵をつくった。その結果、レンブラント風の新作絵画ができあがりました。

それは、どこから見てもレンブラントが描いたとしか思えない出来栄え。これって、どういう意味があるのだろう?

絵画の価値って、誰が描いたか、という履歴が重視される特別な世界。

少なくとも話題性という面で、意味があったのは確かかもしれません。