夕刊フジの新型コロナ集団免疫説記事の真相。村上教授の記者会見とは?

夕刊フジの新型コロナ集団免疫説記事の真相。村上教授の記者会見とは?

夕刊フジにより8月17日に配信された記事:

新型コロナ、首都圏ほぼ全員“既感染”!? 日本の死者が欧米より少ない要因の一つに「集団免疫説」 専門家の新抗体検査で明らかに

をみてびっくりした。

京都大学の上久保靖彦教授の集団免疫説を知っていたので、それが証明されたのか?と興味津々となりました。

同記事は、東京理科大学の村上康文教授らが開いた記者会見(8月13日)での発言内容に基づくものです。

ネット上に会見の動画がありましたので見てみました。
1時間半くらいある長い動画で、いろんな意味でちょっと大変でした。

記者会見の本来の趣旨は、村上教授がCEOを務めるベンチャー企業の「抗体定量検査システムのリリース計画発表」のためのものでした。

その「抗体定量システム」を使った性能テストとして、新型コロナの抗体検出を行ったということです。

対象は首都圏の362人のボランティアだということです。

その検査の結果によると、約1.9%が抗体に対して陽性だったということです。

この数値は、厚労省が実施した抗体検査における東京の抗体保有率0.10%の10倍以上ということで、驚くべき結果であったということですが、夕刊フジの言うポイントはここではありません。

1.9%の陽性率でも、集団免疫には程遠いのですから。

問題は、この検査において、陽性と判定されなかったほとんど全員が、弱いながらも抗体保有のシグナルを示した、というのです。

抗体検査において陽性かどうかの判定は、どこにカットオフ値に置くかで変わってきます。

そして、どこにカットオフ値を置くかは、あらかじめ決まっているわけではなく、弱いシグナルでも、十分有効な免疫として働くかもしれないと。

これには、同記者会見にビデオ出演した順天堂大学の奥村康特任教授(免疫学の権威らしいです。京大上久保教授の会見にも同席していました)も認める発言をされていました。

つまり、カットオフ値の置き方によっては、ほぼ全員が陽性と判定されることもありうるというわけです。

その場合は、夕刊フジの言う、集団免疫が既に成立している状態になるわけです。

カットオフ値をどこに置くべきなのか?
難しい問題だろうと思いますが、今後、さらに研究を進めてもらいたいものです。

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京大、上久保説との関連

京都大学の上久保靖彦教授らは、日本では新型コロナの集団免疫がすでに成立しているという説を唱えられています。

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これは、インフルエンザの流行データにコロナの流行の痕跡が出る(ウイルス干渉)ことを利用して、疫学的に解析して結論しているわけです。その証明としては、実際に日本人に免疫ができているかどうか調べる必要があります。

上久保説では、抗体がつくられる液性免疫(B細胞免疫)ではなく、T細胞による細胞性免疫が獲得されている、とされており、抗体検査では証明できないと思われます。

今回の村上教授の抗体定量検査システムで「抗体」の検出で集団免疫になったとしたら、上久保説とは異なったストーリーになるように思われますね。

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今後の展開は?

村上教授たちの抗体定量検査システムは大量検査が可能であるようですし、非常に感度・精度が高いと言います。

そうであるなら、今後、大規模検査が行われるなら、上記の「抗体」による集団免疫の成立があるのかないのか、はっきりしてくると期待できます。

一方で、上久保教授たちはT細胞免疫を確かめるキットを開発中であるということですので、こちらでも、そのうち、集団免疫説の真偽の確認がなされるようになると、期待しています。

集団免疫、あって欲しいものです。

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