上久保靖彦教授の集団免疫獲得説を理解する

上久保教授の集団免疫獲得説は「日本の奇蹟」を説明する

上久保(かみくぼ)教授説は、新型コロナウイルス流行に関する、いわゆる「日本の奇蹟」や「ファクターX」と言われているものを説明するものです。

つまり、欧米の大半の国では大量の感染者・死者が発生したのに、日本ではその100分の一とか、それ以下という桁違いに少ない犠牲者で済んでいるのはなぜか?

上久保説のあらすじについては、他の記事で書きました。

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でも、本当なんだろうか?

信じていいのだろうか?

専門家でない人も、自分の行動は自分で決めなければなりません。

そのため、上久保説の成り立ちを、要素に分解して理解し、それぞれの要素の妥当性を自分なりに考えてみたいと思います。

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上久保説を分解する

(1)新型コロナの変異はS型(弱毒)→K型(弱毒)→G型(強毒)

新型コロナウイルスは時間とともに変異していきますが、重要なスパイク部分の変異が三つありました。まず、初期に現れた弱毒性のS型、それに続く(やはり弱毒性の)K型です。そしてそのあとに強毒性のG型が現れました。世界中が大騒ぎになったのはこのG型です。

(2)日本は、S型とK型に襲われた

日本人がS型とK型に襲われたことは、インフルエンザの流行データの解析から裏付けられるということです。「ウイルス干渉」という現象があり、インフルエンザに罹っている人は同時にはコロナに罹らないし、逆に、コロナに罹っている人はインフルエンザに罹らない。インフルエンザの流行データは世界的に詳細に収集されているので、日本はもちろんのこと、世界の他の国についても同様の解析をされています。日本は、去年の冬は異常にインフルエンザが少なかったですが、これは、新型コロナがはいってきた証拠となるわけです。流行データを見ることにより、いつコロナが入って来たかもわかるのです。

(3)欧米の多くの国はS型には襲われたが、K型があまり入らなかった

欧米についても、やはりインフルエンザの流行データ解析からS型が入ったが、K型があまり入らなかったことが結論できるということです。なぜ、欧米にK型が入らなかったかという原因については、欧米各国がいち早く(2月頭)中国からの入国をロックダウンしたからだと言います。対照的に、日本は、3月になっても中国からの入国を禁止しませんでした。それによりたっぷりとK型が入ってしまったわけです。

(4)S型とK型に晒された国はG型への免疫を獲得し、S型だけの国は逆にG型に対するADEを発現してしまった

インフルエンザの流行データの解析から、日本と欧米の違いは、K型が入ったか入らなかったか、ということがわかりました。その違いは、人々の免疫の形成のされ方に決定的な差を生み出しました。S型とK型に感染した人はG型にも有効な免疫を獲得するのです(T細胞免疫。抗体検査ではわからない)。ところが、S型には感染したがK型には感染しなかった人は、G型に対するADE(抗体依存性感染増強)を発現してしまい劇症化するのです。これによって、日本と欧米の極端な被害の差が生まれたということです。

(5)日本においては既に集団免疫が獲得されている

S型とK型については、集団免疫に到達する感染率は50%余りと計算されるとのことです(基本再生産数より計算できる)。また、G型については80%余りになるらしいです。従って、S型とK型に晒されて(S型とK型に対する)集団免疫に達していても、そこにG型が来た時には、さらに30%程度の人が感染します。その中の一部が重症化し、お亡くなりになったわけですが、それが、4月から5月に日本で起こったわけです。その結果、日本ではG型についても集団免疫が達成されたと考えてよいとのことです。

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上久保説は検証可能である

こうしてみると、上久保説は、仮説の上に成り立っているものでもなく、自分自身のオリジナルデータに基づく結論でもなく、インフルエンザの流行データという、誰でもアクセスできる公開された信頼性の高いデータを解析した結果の結論です。

従って、上久保教授たちの主張は、解析を間違えていない限り、誰がやっても同じ結論に達するはずの、検証可能な客観性の高いものだと思います。

ご自分の意見を述べられているのではなく、データが語る、科学的・客観的な結論を述べられているのです。

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