「量子コンピュータ」というのが話題になっています。
コンピュータはおなじみですが、「量子コンピュータ」というのはどんなものなのでしょうか?
「量子」なんて、なにやらすごく難しそうです。
確かに難しいのですが、あんまり深入りしなければいいのです。
さらっと、核心だけわかりたい。
レッツ・トライ!
「量子コンピュータ」とは?
「量子コンピュータ」の「量子(りょうし)」とは、「量子力学」の「量子」です。
つまり、「量子コンピュータ」とは「量子力学」の原理にのっとって稼働するコンピュータ、ってことです。
「量子力学」!?
あー、もうだめだ、わかりっこない!
確かに「量子力学」は難しいし、並大抵ではわからない。
というか、「量子力学がわかったというやつは嘘つきだ」という趣旨のことを言った物理学の大家(ファインマン教授)がいるくらいですから。
別に量子力学を理解する必要はありません。
ただ、量子コンピュータがどんな感じのものか、わかりたいだけですから。
量子力学というのは、原子や電子という、物質を細分化していくとたどりつく、小さな粒子の運動を記述する物理理論です。
つまり、ミクロの世界は量子力学に支配されているのです。そこでは、我々の常識では理解できないような不思議なふるまいや性質があることがわかっています。
しかし、我々が日常目にするものは量子力学が支配する世界に比べるとものすごく大きいので、そのような不思議なことは、普通は覆い隠されて表には出てきません。
ところが、技術の発展につれて、コンピュータの最小単位の構造は、どんどん小さくなっていき、ついに量子力学的な不思議な性質が顔を出すようなところまで到達しだしたのです。
ちなみに、「量子」というのは、量子力学の中で扱われる物質やエネルギーの最小単位を表す言葉です。量子の運動を記述する理論なので「量子力学」といわれるのです。
「量子コンピュータ」は従来のコンピュータとどこが違う?
量子コンピュータは量子力学の原理にのっとって稼働するコンピュータ、って言いましたが、もう少しつっこんで、どんな原理か?
量子力学では、「重ね合わせの原理」というのがあります。ものの状態が、複数の基本になる状態の重ね合わせとして決まる、というものです。
量子コンピュータに関係してくるのが、メモリの状態です。
メモリはコンピュータの中心部品ですね。量子コンピュータでは、従来型のコンピュータ(「古典コンピュータ」と呼ばれることがあります)と比べて、このメモリの性質が異なる。
古典コンピュータの場合
まずは、従来型のコンピュータのメモリの話をしましょう。
メモリはコンピュータにおいてデータの格納容器の役割をしますね。
コンピュータの計算に使われるメモリの最小単位1個には、1個のデータの値が格納されて計算に使われます。
データが多くなるとその数に対応するだけのメモリが必要となります。
そして、そのデータすべてに何かの計算をするときには、それぞれのメモリすべてに計算動作をする必要があります。
データが多くなるとそれだけ計算時間がかかってしまうことになります。
これは、学生寮に住む学生に重要な伝言(例えば、明日は臨時休講です、など)を届ける作業に例えることができます。
寮の各部屋が1個のメモリに対応し、その部屋の学生がそのメモリに格納されているデータに対応します。
各部屋にはそれぞれ一人ずつ学生が入っています。
管理人さんが重要な情報を直接学生に口頭で知らせる(この知らせる作業が計算に対応します)ために、各部屋をひとつずつ訪ねなければなりません。
人数が多いとすごく時間がかかります。
100人だと100部屋に行かなければなりません。
つまり、データが多いと、計算時間がかかるというわけです。
以上が、古典コンピュータの場合のたとえです。
量子コンピュータの場合
これが、もし、全ての学生が、あるひとつの部屋に入っているとどうでしょうか。
100人の学生が一部屋に集まっているわけです。
管理人さんはその一つの部屋に行くだけで、一度に伝言の用事がすんでしまいます。
我々の住む世界では無理な話ですが、量子力学が支配するミクロの世界においては、これに相当することが可能なのです。
つまり、一つのメモリにすべてのデータが同時に存在する(同時に存在している状態を量子力学の世界では、「重ね合わせの状態」と言います)。
その場合、ひとつのメモリに計算を行うだけですべてのデータに対して計算をしてしまうことができるのです。
計算が短い時間で終わる。さらに、必要なメモリも少なくてすむ。
これが量子コンピュータの核心の特徴です。
重ね合わせの状態の不思議
余談になってしまいますが、この「重ね合わせの状態」というのは、実に不思議な状態なのです。
学生寮のたとえで言えば、100人が同時に一部屋に集まった状態と言うのは、実は、部屋にいるのはいつも一人だけなのです。
ただ、その一人が、あるときはA君だったり、B君だったり、C子さんだったりと、100人の誰かひとりなのです。
部屋に入って、誰がいるか確認すると、こうして、誰か一人だけが部屋にいる。
しかし、確認しない限り、その部屋には100人の学生がある確率でおり、伝言すれば皆に伝わるわけです。
じゃあ、確認した時に、ほかの学生はどこにいったのか?そこまで追及されると、この比喩は、真の量子力学の振る舞いとは合わなくなってしまいますので、追及はここまでです。
量子コンピュータが実現したら
こういう、量子力学的な性質が出るメモリをつくるには、メモリサイズを小さくすることをはじめとする、いろんな工夫が必要になってきます。
でも、これがうまくできるなら、桁違いに高速なコンピュータが実現します。
現代のコンピュータは、とてつもなく能力が上がりました。
しかしながら、それでも、計算能力が足らずに歯が立たない重要な問題、計算能力が上がれば社会のいろいろな局面で革命的な進歩が起こるような対象が数多くあります。
量子コンピュータは、以上のような、コンピュータの最も基本となる原理の部分において従来とは異なります。
それだからこそ、革命的にコンピュータの能力をアップさせる可能性を秘めているわけです。
まとめ
今回はかなり難しい新技術「量子コンピュータ」をやさしく解説してみました。
量子コンピュータは理論上の産物ではなく、実際に、いくつかの企業が現実機を発表しています。
発展はこれからですが、量子コンピュータの出現で、AIが超小型になり、身の回りのすべてのモノに搭載されるような時代がやってくるかもしれません。
映画「ターミネーター」のような怖い世界の方に振れないように切に祈りたいですね。
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